しかし、ステンレス溶接というのは実は奥が深く、そして難しい溶接だとされています。
ステンレスの種類
ステンレスには製造方法や添加された金属によって、大きく5種類に分類されます。
①マルテンサイト系ステンレス鋼:SUS410
②フェライト系ステンレス鋼:SUS430
③オーステナイト系ステンレス鋼:SUS304
④オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼(二相ステンレス系)
⑤析出硬化系ステンレス鋼
マルテンサイト系ステンレス鋼:SUS410
フェライト系ステンレス鋼:SUS430
オーステナイト系ステンレス鋼:SUS304
ステンレス溶接の種類
ステンレスは、各種アーク溶接をはじめ、電子ビーム溶接、レーザー溶接、電気抵抗溶接など、さまざまな方法で溶接できます。その中でも、アーク溶接は比較的低コストで質の高い溶接ができるため、採用されることが多いです。アーク溶接の中で、良く用いられれる溶接方法としては、TIG溶接やMIG溶接があげられます。他にもファイバーレーザーを用いて溶接するファイバーレーザー溶接という方法も存在し、近年注目を浴びています。
TIG溶接
TIGとは「Tungsten Inert Gas」の略です。TIG溶接とは、タングステン電極を使用し、不活性ガス(=Inert Gas)を使用して溶接部のシールドを行う、アーク溶接の一種です。
TIG溶接では、使用する電極の材質がタングステンのため、アークの発生が安定します。そのため、溶接電流量を調節でき、作業者はワークに与える熱量を的確に制御でき、安定した溶接が可能です。またTIG溶接は、炭酸ガスアーク溶接と比較すると、汚れの原因となるスパッタが出ずらいため、溶接外観がきれいになります。
安定した溶接が可能で、仕上がりもきれいなことから、TIG溶接は主にステンレスの溶接に使用されます。
TIG溶接について、詳しく書いた記事がございます。ぜひご覧ください。
>>TIG溶接とは? MIG溶接、MAG溶接、CO2溶接との違いまとめ
MIG溶接
MIG溶接とは、シールドアーク溶接の一種です。MIGとは「Metal Inert Gas Welding」の略です。
MIG溶接に使われているシールドガスとしては、不活性ガスのアルゴンやヘリウムなどが用いられます。また、活性ガスが用いられる場合はMAG溶接になります。電極は、TIG溶接と違い、消耗する溶接ワイヤーを用い、ローラーによって自動供給されます。溶接棒は自動で供給されますが、溶接トーチは作業者が手動で動かすため、半自動溶接とも呼ばれています。
TIG溶接に比べると、溶接強度が劣りますが、素早く溶接することが可能なため、ステンレス溶接によく用いられます。
MIG溶接について、別の記事で詳細を解説しています。ぜひ参考にしてください。
>>MIG溶接とは? TIG溶接やMAG溶接の違いについて
ファイバーレーザー溶接
ファイバーレーザー溶接とは、ファイバーレーザーを用いて行うレーザー溶接です。
ファイバーレーザー溶接には、以下のメリットがあります。
- 非接触で局所的な加熱が可能
- ビームの小径スポットによる高いエネルギー密度
- 溶接スピードが高速
- CW(連続発振)溶接による連側照射
ファイバーレーザーによる非接触な局所加熱、ビームの小径スポットによる高いエネルギー密度によって、ビード幅に対する溶け込みがTIGレーザー溶接よりも深いという特徴があります。そのため、溶接による焼けや歪みが少なく、高品質な溶接を実現することができます。この特徴から、薄板板金の溶接に適しており、熱による歪みが発生しやすい薄板溶接であっても、歪みが少なくきれいに溶接を行うことができます。
また、ファイバーレーザー溶接は溶接スピードが高速であるため、溶接工程の削減を実現できます。また、ファイバーレーザー溶接は融点の異なる異種金属の溶接など、溶接加工が難しい材料の加工を行えるため、幅広い用途に使用できます。
ファイバーレーザー溶接については以下の記事で詳しく解説しております。ぜひチェックしてみてください。
ステンレス溶接が難しい理由
ステンレスは、大きく、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト・フェライト系(二相ステンレス系)、析出硬化系ステンレス鋼に区分され、それぞれ溶接特性が大きく異なり、さらにそれぞれの鋼種で成分によってさらに細分化されます。そのため、様々な特性を有するステンレスが存在すると言えます。ステンレス鋼は種類が多いことが、ステンレス溶接を難しくしている理由の1つになります。
また、国内で広く普及している「オーステナイト系ステンレス鋼」を例に挙げると以下のような問題が有ります。
①溶接熱により、母材が大きく変形してしまう。
②溶接に熟練の技量を要する。
このような理由から、ステンレスの溶接は難しいと言われています。
ステンレス溶接における注意点
ステンレス溶接では、溶接手法ごとに注意点がいくつもあります。溶接手法に分けて解説します。
TIG溶接
- シールドガス流量が少ないと、ビード表面の酸化や溶接欠陥が発生しやすくなる。
- シールドガス流量が多すぎると、ガスの流れが乱れ、空気を巻き込み、ブローホールなどの溶接欠陥が発生してしまうことがある。
- アーク長が長すぎるとシールド不足になり易い。
MIG溶接
- スプレーアークを用いる場合はブローホール対策のため、アーク長が4~6mmになるように電圧の調整が必要。
- パルスアークは溶接材料やパルスのサイクルによって適正電流、電圧が異なるため、あらかじめ溶接条件の設定が必要。
- 溶接方向は磁気吹きを考慮して、アース側から遠ざかる方向で行なう。
ステンレス筐体の溶接におけるポイント
以上のように、ステンレス溶接は、熟練の技術が必要であったり、さまざまな注意点がございます。
実は、熟練の技術が不要で、仕上がりも綺麗な溶接方法がございます。
歪みを抑える新たな溶接方法【ファイバーレーザー溶接】
それは、「ファイバーレーザー溶接」と呼ばれる、専用の溶接ロボットを用いた溶接手法です。
ファイバーレーザー溶接では、高いエネルギー密度で局所的にレーザー光を照射することができるため、筐体自体に熱が溜まりづらく、筐体への熱影響が少ない溶接が可能となります。
このため、TIG溶接等では製作が困難な、歪みの少ない板金筐体を製作できます。
その上、ロボットが作業を行うため、製品の仕上がりが均一になります。
また、溶接部分は母材金属が溶融して一体化しているため、母材と同等の耐久性を持ち、十分な強度を保つことができます。
さらに、ファイバーレーザー溶接の場合は裏面にも焦げは発生しないため、通常の溶接手法では必要となる、仕上げ作業が少なくなり、効率の良い筐体製作が可能になります。
ファイバーレーザー溶接についてより詳しく知りたい方は以下のリンクからご覧くださいませ。
>>ファイバーレーザー溶接とは? メリット・デメリットについて解説
当社ならではのファイバーレーザー溶接サービス
筐体設計・製造.COMを運営する岡部工業株式会社では、ファイバーレーザー溶接を行う6軸多関節ロボットを3台保有し、オリジナル冶具の内製まで一貫生産をしております。
これにより、高い生産性を保ちつつもコストダウンを可能にする、岡部工業ならではのファイバーレーザー溶接が実現します。
また、当社にはファイバーレーザー溶接の開発を専門にする課があり、通常は溶接困難なアルミやステンレス、異種金属などのサンプル溶接から、筐体設計におけるVE提案まで行い、お客様に寄り添った設計開発を行っております。
筐体設計・製造.COMを運営する岡部工業株式会社は、群馬県から発信するグローバル板金ソリューションカンパニーとして、お客様の板金や筐体に関するお困りごとを解決いたします。
中国工場とも連携した幅広いネットワーク、最新鋭のファイバーレーザー溶接ロボットを代表とした圧倒的な設備力、さらに創業以来から大手メーカーとの取引によって積み重ねてきた板金設計・筐体設計のノウハウを活かして、お客様の課題を解決していきます。
筐体という製品は、一度製作したら長く使用するものです。
だからこそ、安心安全かつ使い勝手がよく長持ちする製品であるべきです。
しかし筐体設計は、
目的や用途、使用環境、精度、特性、コストなど数多くの要求を満たす必要があります。
また、筐体設計は、実際の製作現場である下工程についても最適な工程を考える、全体最適な視点が必要なプロフェッショナルな仕事です。
そのような筐体製作には、生産現場からの設計サポートと、高度な生産技術力が、量産体制の場合は特に求められます。
部品点数を1つ減らしたり、工程を1つ短縮するだけでも、量産での筐体製作の場合は大きなコストダウンや納期短縮につながるのです。
設計初期の段階から当社にご相談いただけましたら、当社にて生産技術的な要素を設計に取り込んだ上で、筐体製作を行います。
そうすることで、当社の金型や設備、製造ノウハウを盛り込んだ筐体が製造可能となり、低コストで品質の良い筐体を短納期で製作できます。
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