今回のテクニカルニュースの概要


今回ご紹介する事例は、不完全ネジ部がめねじと干渉してしまい、蓋を固定できなかった精密板金筐体に対して、めねじをC面取り付きバーリングに変更することで締結不良を回避することができた技術
提案事例です。

お客様からは、セムスネジで蓋を固定する精密板金筐体の試作依頼をいただきました。しかし、図面通りに作成すると蓋を筐体に固定することができないということが判明し、その原因はがセムスネジの不完全ネジ部が大きすぎるために締結不良につながってしまう点にあることがわかりました。

そこで筐体設計・製造.comでは、筐体本体のめねじをC面取り付きバーリングに変更するようにご提案いたしました。この面取り部の隙間によって、セムスねじの不完全ネジ部がめねじと干渉することがなくなり、最後までネジを回し切ってきちんと固定することができました。

今回はセムスネジでしたが、薄板部品を皿ネジで締結する際にも、面取り付きバーリングは締結不良を回避する方法として効果的であり、当社でもネジ締結が多いお客様に対してご提案を行っています。

 

 

課題:不完全ネジ部がめねじと干渉してしまい、部品を固定できない…

当社にご相談いただく板金筐体では、蓋やカバーが使用されることも多いですが、使用される蓋はネジ止めされることが多くなっています。そして蓋を止めるねじには、ナベネジとワッシャーが組み合わさった下写真のようなセムスネジ(座金組み込みねじ)がよく使用されています。

セムスネジ

 

ワッシャー&なべねじ

 

ワッシャーを都度組み込んで使用する方法も可能です。しかし小さくバラバラな製品同士を組み込みのはやや工数がかかる作業で、数量が多くなればなるほどリードタイムにも影響してしまいます。そのため板金部品には、あらかじめワッシャーが組み込んであるセムスネジが数多く使用されています。

 

 

今回ご相談いただいたお客様からも、セムスネジで蓋を固定する精密板金筐体の試作依頼をいただきました。しかし、図面通りに作成すると蓋を筐体に固定することができないということが判明しました。

その原因は、セムスネジの不完全ネジ部が大きすぎるという点にありました。

ワッシャーと締結する蓋の分だけ、セムスネジには不完全ネジ部が必要になります。しかし不完全ネジ部が大きすぎると、不完全ネジ部が飛び出してしまい、隙間が生じてしまいます。この隙間分はネジが回転できないため、蓋が固定される前にネジが締まってしまい、固定不良につながってしまいます。

 

 

筐体設計・製造.COMの対策:めねじをC面取り付きバーリングに変更して締結不良を回避!

そこで筐体設計・製造.comでは、筐体本体のめねじをC面取り付きバーリングに変更するようにご提案いたしました。

バーリング加工をした表面側に、上図のようにC面取りをする工程を加えました。この面取り部の隙間によって、セムスねじの不完全ネジ部がめねじと干渉することがなくなり、最後までネジを回し切ってきちんと固定することができました。

非常に小さな隙間ではありますが、きちんと固定できなければ、セムスネジのワッシャー部の面積分の緩み防止効果が失われてしまい、板金部品の緩みにつながってしまいます。そのため、わずかな隙間も許さないように、このような工夫をする必要があるのです。

 

 

薄板部品を皿ネジで締結する際にも、面取り付きバーリングは効果的!

1mm程度の薄板のように、板厚が薄くなれば薄くなるほど、不完全ネジ部の大きさが比率的に大きくなってしまいます。予想よりも不完全ネジ部が大きすぎて、組み込んでみて初めて気付くケースも多々ございます。

そして皿ネジの締結時は、薄板の影響が顕著に表れてしまいます。

上図のように、バーリング表面に面取りがないと、わずかな不完全ネジ部であっても大きく作用してしまい、締めきれなくなってしまいます。

 

そのため皿ネジで薄板部品を締結する際にも、バーリング表面に面取り加工することで、最後まで締め切ることができるようになります。

 

 

まとめ

筐体設計・製造.comを運営する岡部工業株式会社では、精密板金筐体の量産OEM製造のご依頼を数多く承っています。そしてご依頼いただくのは、量産前の試作段階や設計の検討段階が多くなっています。

その理由としては、試作段階での厳しい量産性の検討プロセスにあると考えています。量産ではコストやリードタイムをいかに削減するかが焦点になりますが、試作段階では機能や精度面で過不足がないかを確認する必要があります。試作段階でどれだけ要素をあぶり出すことができるかがポイントになりますが、当社では試作段階で細かな検査をするため、上記のような不完全ネジ部での締結不良にも気付くことができ、量産時の品質トラブルを回避することができています。

精密板金筐体のパートナー企業をお探しの方は、まずは一度当社までご相談いただけましたら、最適な板金筐体設計のご提案をいたします。

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